アラブの風と音楽

アラブの風と音楽

若林忠宏、ヤマハミュージックメディア、2003年。

アラブ楽器のミュージシャンが書いた本。
興味深い。く調べているが研究書ではない。
旋法などについて詳しい。

21
アラブ古典音楽で組曲が最も早く発達したのはイスラム王朝期のアンダルース宮廷古典音楽=ナウバ形式で
これは北アフリカに伝わる。
30
付加リズム=2拍子と3拍子の複合
インド・アジア型:2+3
バルカン・南欧:3+2
アラブ・トルコ:3+2+2+3(東西の折衷)
50-53
弦楽器 バルバト→オウド→東:琵琶、西:リュート(後ウマイア朝からグラナダ王朝時代はオウドと同じ楽器)
78
古代ペルシア音楽=科学音楽→アレキサンダー時代にギリシア科学音楽の影響→高度な理論体系
モスーリ(マウスィーリ)父子:ペルシア人ウマイア朝宮廷楽士からアッバース朝3~6代目の間宮廷楽士長
81
七つの旋法、30の展開法、360の小旋律=週7日、月30日、年360日=古代ペルシアの音楽理論
82
ギリシア・ペルシアの科学:[哲学、科学、数学、天文学、音楽]←一つの学問大系
86
アブール・ハサン・イブン・ナフィー:仇名はズィリヤーブ(黒夜鳴鶯、ナイチンゲールの意味)、ザンジュ出身、アッバース朝でモスーリ父子に師事
94
オウドの4本弦、ダラブカの基本音 万物の4元素「土、水、火、空気」=古代ギリシアのエートス論
95
ズィリヤーブは弦を1本追加し5本にしたのでバグダードを追放され、アッバース朝にライバル心をもつイベリア半島の後ウマイア朝に呼ばれる。アンダルース独特の古典音楽様式ナウバの基礎を築く。
95-96
ズィリヤーブに関するさまざまな逸話
105
音楽と医学・心理学の関係を説いたエートス論(プラトン、アリストテレス)
オウドの4弦
第一弦(最高音):火、いらだち・不快感・情熱、黄色
第二弦(中高音):気、気力・憂鬱からの解放、血液などの循環系、赤
第三弦(中低音):水、悲しみ・哀愁、消化器系、白
第四弦(最低音):地、躁鬱のバランス、神経系、黒
中国の五行説やアーユルヴェーダにも通じる
114
スーフィズム:「サマー」音楽的な業、「ズィクル」詠唱、
サマーに旋回舞踊を行う派、音楽演奏と合唱(カッワーリ)の派、大合唱重視派などいろいろ
115
メヴィレヴィ派:トルコ宮廷音楽、音楽学校、
ベクタシュ教団:民族楽器で吟遊詩人の楽器サズを重用、旋回舞踊、イェニチェリにも浸透
121
アルメニア人:苦難の歴史、トルコ音楽の楽譜の考案、出版販売
195
インド、西アフリカ、中央アジア(アフガニスタン含む)には音楽家に差別があり楽器にも格があるがアラブにはない。
196
そのため古典音楽と非古典音楽の境目が不明瞭
200
ウンム・カルスーム:エジプトの女性歌手
アブドェル・ワッハーブ:ウンム・カルスームの師匠、近代アラブ歌謡の父
226
トルコの花柳界はアラブよりも盛ん
(1)古典音楽がアラブよりもおおっぴらにでき発展した(2)ジプシー、アルメニア人、ギリシア人、ペルシア人ら世俗芸能に携わる人材
飲酒喫煙の習慣もアラブよりおおっぴらだったかも。
花柳界の舞姫はチェンギと呼ばれる(語源はチンゲネ)がジプシーとは限らない。
宮廷舞踊の流れを汲むカルスィラマやバルカン舞踊の流れを汲むスィルトを踊る。
女性舞踊が禁止されて少年舞踊。9拍子のキュチェックなどを踊った。
228
エジプト
伝統的花柳界の舞踊ラクサ、エジプト系ジプシーのガウェズィの舞踊、ナイル川上流の芸能集団サイーディーの踊り、リビアやチュニジアのベルベルの踊り、レバノンのグループ・フォークダンスダブカなど。