【書評】昭和陸軍全史 1 満州事変

藤村 和巳、『史学』第八五巻 第四号、2016年、三田史学会

『昭和陸軍全史 1 満州事変(講談社現代新書)』川田 稔、2014年、講談社 の書評

昭和陸軍全史 1 満州事変


昭和陸軍がどのようにして日中戦争から太平洋戦争へ導いていったか。
永田鉄山(一夕会)、石原莞爾(関東軍)、武藤章、田中真一らの戦略構想を明らかにする。

永田氏、昭和期陸軍革新派の中心人物であるが一次資料が乏しく研究がほぼ皆無。
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第一章:バーデンバーデン会合、一夕会、陸軍本流(主流派)=長州閥、宇垣派、反主流派(旧薩摩閥)
第二章:事変不拡大、満州政権不関与(宇垣派首脳) vs 全満州占領、独立国家建設(関東軍)
第三章:第二次若槻内閣、宮中グループ、昭和天皇、国際環境
第四章:宇垣派の変心に若槻首相・幣原外相の同意
第五章:一夕会の工作若槻内閣総辞職、犬養毅内閣(政友会)、リットン調査団、五.一五事件、国際連盟脱退
第六章:永田の構想
第七章:石原の構想

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本書の優れた点
史実を時間経過に従ってたどる
永田亡き後、永田の構想を継ぐ東条、武藤と石原の対立など永田と石原の構想が太平洋戦争まで影響を与えたという論

疑問点
永田の構想の変化
永田の満蒙・中国本土についての分析薄、実務経験なし