ICT・情報行動心理学: シリーズ心理学と仕事20

太田 信夫 監修、都築 誉史 編集『ICT・情報行動心理学: シリーズ心理学と仕事20』2017年、北大路書房


1章 ICT・情報行動心理学への招待
「データ」と「情報」の違い。受け手に影響を与える意味、有用性、価値。メディア=コミュニケーション、記録の手段、
関連する分野:認知工学、インターネット心理学、メディア心理学
IA(Intelligence Amplification:知能増幅)人間が持つ知能を増幅する
CMC(Computer mediated communication)
コミュニケーションメディアによる対人緊張、親和感情、情報伝達の違い

2章 人工物の使いやすさの心理学

認知心理学の知見を製品開発に活かす→認知工学
人と機器とのコミュニケーション、インタフェース
実行と評価

デザインの基本原理
1.発見可能性
2.アフォーダンス(モノ自体が教えてくれる情報)
3.シグニファイア(行為の手がかりを与えてくれるもの)
4.対応付け(操作部と操作対象の自然な対応)
5.制約(不要なものは押せなくするなど)・ロックイン・ロックアウト・インターロック
6.フィードバック 操作の結果を可視化 エラーメッセージや処理中メッセージ
7.概念モデル(=メンタルモデル) 設計者と利用者のギャップ 仕組みを利用者が理解しやすいようにする

使いやすさ=ユーザビリティ ISO9241-11
有効 効率 満足度
・学習しやすさ・効率が良い・記憶しやすい・エラーに強い・満足

ユーザーエクスペリエンス ISO9241-210
製品、サービスを利用したときに生じる個人の知覚や反応
・インタラクション(操作性)の満足感・成果の満足感・演出の満足感(効率的でなくてもデザインコンセプトに満足を得る、楽しい)

アクセシビリティが高いとUXも高くなるといわれている

マニュアルは利用者と設計者のコミュニケーション

ユーザビリティの評価
・ユーザビリティテスト・インスペクション法・ヒューリスティック法・ウォークスルー法

質問紙
SUS・UEQ、UMUX(UXに関する質問)・Nasa-TLX、SWAT(メンタルワークロードに関する質問)

ヒューマンエラーの種類
・プラン:意図形成の間違い・スリップ:プランは正しいが実行が間違え・ラプス:記憶、忘れ

3章 インターネット上のトラブルと対応
●ネットいじめ Cyber-bullying
文科省2006年度から児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題」のいじめの様態区分に「パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷やいやなことをされる」項目追加。

被害者
不安や抑うつ、影響1年以上、学校適応感の低下
相談など対処行動の抑制が(従来型いじめより)みられる
匿名性から加害者が特定しにくい:孤立性、逃げ場がない:不可避性、波及の危惧→無力感→相談抑制

被害に会ったら通報する。遮断は有効ではない。

加害者
匿名性の認知
匿名的な状況下で攻撃的・逸脱的・反社会的
非言語的手がかりが伝わらず「相手がそこにいる」間隔欠如

匿名だからといって必ずそうなるわけではない。社会的親和的なふるまいも

自己のアイデンティティ(集団の一員としての位置づけ、独立した個人としての位置づけが活性化しているか)それによって後のプロセスが異なる

●出会い
事件や犯罪は出会い系サイトが減少、コミュニティサイトに起因する事犯が増加

ハイパー・パーソナル・コミュニケーション理論(Walther,1996)会ったこともない相手を好意的に評価する理由
1.受け手側の「手がかり」過大視、連体的集団的な意識、相手との類似性認識
2.送り手側の自己呈示のしやすさ:非言語的手がかり、社会的てがかりが伴わない
3.メディアの特徴:非同期的
1~3で好意の発生
4.フィードバックループ:相互にポジティブな自己呈示

見知らぬ相手とやり取りしている(したい)人
孤独感、対人的疎外感、抑うつ、承認欲求→高い
自尊感情→低い

・対人ストレス摩耗・希望(がもてない)・見捨てられ不安・親密性の回避

●「弱い紐帯の強さ」理論、(Granobetter,1973)
弱い紐帯の効果

4章メディアの影響に関する心理学―方法、実際、仕事―
メディア使用が人間の心理的側面にどのような影響を与えるか

例)テレビゲームと攻撃性の関係
調査研究:アンケート、相関関係はわかるが因果関係はわからない
パネル研究:時間の間隔をおいて調査、相乗的な影響も見出す、交差遅れ効果モデル
実験室実験:参加者を無作為に複数のグループに分ける、条件操作と条件統制、独立変数/従属変数、実験室に来てもらうので短期的な影響
メタ分析:個々の実証研究を統合、論文収集:影響が検出された論文が公刊されやすいので偏る

メディア影響に関する取り組み
・倫理審査機関・フィルタリング・ネットパトロール事業者・啓発機関・相談機関

5章 集団による課題遂行とコミュニケーション

課題遂行・1意思決定・2問題解決・3アイデア創出

組織においては決定が集団でおこなわれる。
メリット
・多くの情報が活用・多様な価値観、考え方を活用・実行者を意思決定に参加・決定案の正当性
デメリット(阻害要因)
・同調・社会的手抜き(課題遂行の動機が低下)・集団思考(愚かな意思決定を導く)・集団極性化

選択ジレンマ課題では事前個人判断より、集団意思決定とその後の個人判断の方がリスク水準が高くなる。:リスキーシフト

社会的アイデンティティと脱個人化(匿名性)

討議型民主主義
エンクレーブ型討議(閉鎖化したグループでの討議)
フィルタリング(自分に興味ある情報だけ届くようにする)
サイバーカスケード(人々が一団となって押し流されていく)

6章 ビッグデータを用いた人間行動の分析