日本古代の祭祀と女性

日本古代の祭祀と女性義江明子、1996年、吉川弘文社

9、鹿島社「物忌」女性神官 女性が生涯を神に捧げて兄弟の家を存続させる。 玉依ヒメ 未婚の処女→神の妻=巫女の原型 物忌は終身職
13、物忌は幣帛の出し入れのため内陣の戸を鍵で開く、御戸開(みとびらき) 「神代よりつたへたる、あまくだりのみかぎ(御鍵)をもって…」
15、物忌=聖処女のイメージは中世~近世の当禰宜が意図的創出
●一、玉依ヒメ
26、タマヨリヒメ=タマ(魂)をよりつかせる力 神に仕える女性の普通名詞 賀茂神社
32、加茂伝承に類似の説話 ①風土記常陸国那賀郡 ②古事記中巻の神武妃出生 ③古事記中巻オホタタネコの出自 ④日本書紀祟神紀の箸墓伝説 共通ワード→大物主神
37、三井社(三身社)女の三柱の神を祀る、御井社、御井神社など「井」のつく神社 御祖神社 井=泉 泉信仰 女性の水神 玉依姫の観念 播磨国風土記 井の水=貴人(天皇)食膳奉仕、酒
39、水の儀礼 水を支配し呪的儀礼を司る水の支配者=大王、首長
44、斎祝子(いみはふりこ)=加茂氏一族の伝統的巫女p100 伊勢斎宮に習って賀茂社の斎院
44-66、加茂県主(かものあがたぬし)家伝
60、浄刀自女
66、御阿礼(みあれ)祭、御阿礼神事 阿礼(あれ)=神の出現・更生・再現・復活 アレ(阿礼)ヲトコ・アレヲトメ アレヲトメ=玉依ヒメならアレヲトコの機能は?
71、祭りでアレヲトコ役=祝、アレヲトメ役=斎祝子ではないか? アレヲトメ=神の妻、アレヲトコ≠神→ではアレヲトコの役割は?
72-73、嬥歌(ウタガキ・カガヒ)=嬥会、歌垣とも書く=「飲み楽しみ歌ひ舞ふ」祭り 性的儀礼?
74、垂髪 巫祝之類、神部斎宮宮人は結髪令の対象外 ウタガキでは呪的儀礼として男女の交わりは集団公認 武烈即位の歌垣伝承
78、斎院 アレヲトメとの違い:アレヲトメは祭祀の時の役割、斎院はト定
82、基層信仰の一般神社=神は祭りの時だけ降臨 王権と密着した伊勢神宮=神は常駐
●二、物忌童女と「母」
90、伊勢の斎宮神話でなく制度として確実天武朝大来皇女(7c)
100、日常の神事は男女専業神職者が行う
101、「事実としては斎宮の代理として物忌が置かれたのではなく、物忌の上に名前だけの(ただし権威としては隔絶した)斎宮が後から設定されたと見るべきだろう」
103、伊勢内宮・外宮の神官が神事の由来・次第を詳細に記した、804年延暦23年→『皇太神宮儀式帳』と『止由気宮儀式帳(とゆけぐうぎしきちょう)』=併せて『儀式帳』ともいう
104、伊勢神宮=国家祭祀 在地祭祀、豪族祭祀とは違う
105、物忌は童女で物忌父は後見人である一族の男性、実際の父が多い
120、男性:狩猟vs女性:農耕ではなく男性:狩猟(山のもの)vs女性:漁撈(海のもの)
125-136、ナホラヒ(奈保良比)での禰宜・内人の妻子、物忌の母など成人女性の役割は?
136-、中世:物忌→子良、物忌父→物忌 物忌母=館母(たちおも)=母良(もらorおもら)
143-、なぜ「御戸開」が大物忌の役割なのか? 鍵は倉の鍵 倉の管理、鍵の保持は成人女性の日常的な役割
146、「母良独自の職掌として注目されるのは、神御衣の織成である。」
147、「『儀式帳』では、九月新嘗祭にあたって禰宜・内人が『己之家に養蚕』の糸で『織り奉る御衣』を太神の御衣に供奉するということがあり、」
148、「神事のあとの直会には『禰宜内人妻』の舞が特に明記されていた。」
150、中世~近世:初潮による退任=子良放
152、<血の穢>が問題になるのは9世紀半ばごろから 10世紀後半以降<女性の穢>へ転化
153-154、御巫(みかんこ、みかんなぎ):天皇の身体、座摩(いかすり)巫:大宮地と宮廷内の井戸の神、御門巫:宮中の入り口の守り神、生嶋巫:大八洲=国土全体の国魂神 4つの内座摩巫のみ童女 土地の豪族の王権に対する服属→国造一族の女性を差し出す
157、神は御巫の存在によって常在を証明→神を常在ならしめるため女性祭祀者が斎み籠もりの生活
158、戸座(へざ)=7歳以上の童男 火炬小子(ひたきのわらわ) 神事の御膳奉仕
161、処女性や成人などではなく身体の大きさ
162、目に見える身体の大小で権力関係の優劣を誇示=男女どちらでも良い
●三、祭祀と経営
■1.殺牛祭神と「魚酒」
181、殺牛祭神
182、雨乞いのための殺牛:日本古来の農耕儀礼 祟り払いの殺牛:新しく伝わった
187、魚酒=飲食物
188、食事を供与しての共同作業ではなく、祭祀を媒介とした共同作業
199-205、女性の経営、酒造と酒の貸し付け
214、『続日本紀』をはじめとする正史の類では「男耕女織」といった表現がままみられるが、これは中国的男女性別分業観の直輸入 日常的には男女が農耕に従事 祭祀儀礼として農耕の成果を神に捧げるのは女性 五月男女で「さうとめ」と読む
218-219、「郷家」とはサトのヤケ サト=村・里、郷、などの字、律令行政前からあった実質的な社会集団 イエ=家族の住まい、ヤケ=経営の拠点、支配層はイエとヤケを持つ、庶民はヤケを持たない、中世に一つになってイエになった
230、祭田神事の準備は首長層がする 木簡・土器などに見られる「里刀自(サトノトジ)」とは何か?9c半ば 里刀自(女性・里長の妻か?
)が男女の田人・田作人を組織し指揮・統率して農耕労働をした
223、在地レベルの女性の公的役割
224、「刀自」は女性尊称 寺刀自、家刀自などさまざまな刀自がいる
●野神まつり見学記
滋賀県日野町寺尻・八日市市芝原
1995年
日野町寺尻は男女悉集、芝原は女人禁制
●結び
250、女性と祭祀の関わりは、女性の霊能・神秘性によるものではなく、男女の日常的働きに発する
251、農耕労働における女性の働き 中世まで:代替えしがたい(男女)固有の労働領域
253、采女新嘗祭で食膳奉仕、天皇の性の相手 服属儀礼・人質としてだけではなく豪族層女性の政治的権能
254、「折口信夫は『水の女』において、『神に近い女、神として生きている神女なる巫女』が水の祭祀に奉仕し、神の嫁となる姿を描いた。また、川に設けられた棚で神御衣(かんみそ)の織成をする巫女にも水の女の姿をみる。しかし、本書で詳しく述べてきたように、水と女と祭祀の関係については異なる理解が可能であり、御衣織成についても同様である。折口説は、天皇論の一環
としては首尾一貫しており重要な意義を持つが、女性史の視点に立つと、巫女論としては必ずしも依拠できない。」
255、倉塚瞱子氏は沖縄の例から折口説に対する疑問 斎宮=ヒメの転落、追放されたヒメ
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参考文献候補
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岡田精司「大王と井水の祭儀」(『古代祭祀の史的研究』塙書房、1992)初出1980
志田諄一『風土記の世界』[教育社歴史新書]教育社、1979
西口順子「巫女の炊事と機織り」『古代の祭りと芸能 立ち現れる神』[体系日本歴史と芸能]一、平凡社、1990